第2章 爪痕【赤司征十郎】*裏あり
ーその後ー
あれから数ヶ月の月日が経つ。けど、俺はあの熱帯夜を忘れる事はできず、ふとした時にナナの感触、匂いを求めてしまう。
とうとう我慢ができなくなった俺は夜、洛山の寮から爺やの携帯電話にかけた。
「もしもし、爺や?」
『坊っちゃま!?一体どうなされたのですか!?』
爺やは大変驚いているようだ。まあ、初めて自分から電話をかけたからな。
「…爺や、頼みたい事があるんだ」
『はい、この私にできることであればなんなりと申しつけください』
「葛城ナナという女性を探して欲しいんだ」
俺はそう言うと爺やの口調が少し曇り始めた。
『…坊っちゃま、もし見つけたとしてどうされるおつもりで?』
「…一目でもいい、彼女に会いたいんだ。頼む、爺や!もう胸が苦しくて堪らないんだ…」
俺は次第に感情が高ぶって震える声で必死に懇願した。暫く爺やは考え込んでいるのか静寂が訪れる。
『…わかりました。では彼女の身元がわかったら追って連絡します。』
「ありがとう爺や!恩に着るよ」
俺の望んだ答えをくれた爺やに精一杯の感謝をした。
ーーそして、2日後に爺やから俺の携帯電話に連絡がかかり、早速電話に出る。
『もしもし、坊っちゃま。葛城ナナの身元がわかりましたよ』
流石爺や。赤司家に仕えるだけあって仕事が早い。
俺は自然と口角が上がった。
「ありがとう、爺や。それで、彼女はどこにいるんだい?」
『彼女は都内に住んでいます。ですが…』
「爺や?」
爺やの口調が途端に止み、俺は嫌な予感がしてならない。けど、それでは前に進めない。
煩い心臓の音に耐えながら爺やの言葉を待った。
『…彼女はもうご結婚されています』
前に別れたという元婚約者とよりを戻したのか、それとも別の輩となのかわからない。
どっちにしろ、俺と結ばれるつもりはなかった。
それがハッキリとわかると頭を石で投げつけられたように俺はショックを受け、何も言えなかった。