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君がいた夏

第1章 遠く離れたって…【虹村修造】


「ねぇねぇ、シュウ!お腹空いてるでしょ?シュウの大好きなチャーハン作ってきたから食べて食べて!」

「おう、サンキュー!!いただきます!」

渡された弁当箱を開け、早速頬張ると絶妙な塩とコショウ加減とパラパラ具合がよくて、パクパクと食い進む。

「んまっ!んめー!」


「ふふ、昔から好きだもんね。こんなに大きくなってもちっちゃい時と同じ顔してる。」


「…仕方ねえだろ」

「別に悪いなんて言ってないよ。それに強面のシュウが可愛く見えるし」

可愛いって言われて嬉しくなんかねーけど、ナナに微笑まれると怒る気力が出なくてそのまま食べ続ける。

「…ご馳走様。てか今日はやけに気が利くじゃねーか」

食い終わってナナに俺は肩をぽんと叩くと、急に目をウルウルさせて俺をジッと見つめてきた。





「…だって、シュウのために作ったんだよ。浴衣もシュウのために着てきたんだよ…」

「!!」

な、なんだ!?今日はやけに素直じゃねーか!?
だからちょい遅れたのか?

そんな彼女に驚きながらも、俺の為だと言われたら嬉しくて堪らない。だけど、情けない事にこの先どう言えばいいのか分からなくて黙ってしまう。







ピュ〜、バン!

「…あ、始まったね!キレ〜!」
「…お、おう。そうだな」

畜生、何やってんだよ俺は!

花火の音に助けられたけど、本当に自分が情けなくてしょうがない。


…今の俺は中学最強の男じゃなくて中学最強のヘタレだな。


しばらく豪快に打ち上げられる花火に夢中になっているとナナが急に口を開く。

「…花火、綺麗だね」


彼女へ顔を向けると、目を輝かせて花火に魅入ってる横顔に思わず見惚れていた。


…馬鹿野郎、お前のがきれいだっつーの。



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