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君がいた夏

第1章 遠く離れたって…【虹村修造】


中3の夏休み、厳しい練習の合間を縫って俺は幼馴染であるナナと部活の終わりに近所の花火大会へと誘った。

急な誘いにも関わらず、向こうからは元気よくOKの返事をもらい、俺も顔が思わず綻ぶ。


約束の時間になり俺は待ち合わせ場所でそわそわしながら待っているとちょっと遅れてナナがやってきた。

「はぁ、はぁ…。ごめんね、シュウ!!遅れちゃって…!」

「おっせーよ。って…!!」

ナナの声が聞こえてからあいつの姿を見ると、なんと浴衣姿であり、普段はおろしている髪を丁寧に編み込んでいる。


しかも走ってきて息切れしているだけなのに、浴衣独特の雰囲気と隙間から覗く鎖骨とうなじで普段はゼロに等しい色気を感じ、俺は赤面して顔がめちゃくちゃ熱い。

そして途端にあんな事やこんな事を一気に想像してしまう。


「あれ、なんで黙ってんの?」

「な、なんでもねぇよ!…ほら、早く場所とんぞ!」

顔を覗き込まれてヒヤッとした俺は照れ隠しで、ナナの手を引っ張って歩き出す。

「ちょっと、シュウってば!痛いよ!」
「…わりぃ」

そう言われて俺は手の力を緩めてナナの歩調に合わせる。ナナは不安げに俺の顔をまた覗き込んできた。身長差のせいで上目遣いになってるもんだから、余計に可愛くて堪らない。


ナナは特に美人というほどではない。けどふとした仕草や表情がとても可愛くて見逃せねぇ。


俺は元々強面で人に近寄りがたいオーラを持っているせいで特に女子からは距離を一歩置かれている。荒れてた時期は誰も近づきやしなかったし。


それでもこいつは昔と変わらず俺に接してくれ時には心配だってしてくれた。


…だからいつの間にか幼馴染以上に思っていた。今は浴衣姿とあって普段とは違う魅力を感じる。


まあ言い方は悪いけど馬子にも衣装ってこのことか?

「今日のシュウ、なんか変だよ?暑さにやられた?」

顔の熱をまた感じた俺は顔を隠すために目を俯く。

「…いや、大丈夫だから気にすんなよ」
「そう?あ、ちょうどここ空いてるから座ろっか!」


ナナはシートを引き俺に座らせるよう手で催促し、俺に続けてナナ自身も腰をかけた。

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