第2章 爪痕【赤司征十郎】*裏あり
「…葛城さん?」
平静を装いつつナナの肩を抱くが、内心俺はドキドキとハラハラで一杯だ。
しかもワンピースから覗く程よく出ている鎖骨、丸みの帯びた肩、胸の谷間に俺の目が釘付けになる。
そして唇を見て、俺は今までにない感情と欲望が出始める。
だめだ、彼女とは初対面だぞ…!何を考えてるんだ、俺は!?
自分の唇を噛んでいると、酔っているせいかナナが艶のあるゆっくりとした声で喋りかけてきた。しかも、目を潤わせてこちらを見上げながら。
「…赤司君、ごめんね。飲みすぎちゃった」
世間で言われる常套手段に引っかかるはずはないと俺は思ってたのに、そのままでも美しいナナがそんな顔をすると、理性が弾け飛びそうになる。
だけど、必死に俺は我慢する。
「…いいですよ。…葛城さんなら」
「…ありがとう、優しいのね。赤司君…」
ナナは俺の膝下に倒れそうになり俺は素早く両肩を掴んだ。
このままここにいると彼女の容態が心配だ。俺は決心してナナの顔を覗き込む。
「…部屋まで送りますよ」
「…ごめんね、そうさせてもらおうかな」
部屋番号を聞いて、ナナの右手を俺の首を引っ掛けて肩を組みそのまま彼女の部屋へと向かう。
鍵を開けて、彼女をベットまで運び一緒に腰を掛ける。肩を抱き寄せると、彼女が話しかけてきた。
「…ねぇ、赤司君。彼女いる?」
「いませんよ、葛城さんは?」
「…私、先月に別れたばかりなの」
その言葉を聞いて、不謹慎だが俺は心底喜び口角が上がる。期待が胸を膨らませて心臓が煩い。
「…ひどいですね、葛城さんみたいな素敵な女性を振るなんて」
「…ふふ、ありがとう。ほんと、ひどいわよね、婚約まで、してたのに…」
彼女は声と肩が震えて、今にも泣きそうだった。
その震える肩を見て、大人な彼女が儚く可愛く思え、俺は包み込むように優しく抱き締めた。
「…赤司君!?」