第2章 爪痕【赤司征十郎】*裏あり
「…可愛いなんて言われてちっとも嬉しくないですよ」
「ふふ、いいじゃないの。これから嫌でも大人になるんだから」
目を俯く俺に彼女は俺の肩をぽんと叩いて、微笑む。
母親以外の女性からボディタッチなどされたことはないが、これぐらいなんてことない筈なのに何故かドキッとしてしまう。
…俺としたことが、少し触れられただけでこんな胸が締め付けられるんだ?
理解できない心臓の動きに俺は疑問を抱き、悩んでいると彼女は思い出したように手の平に拳をポンと置く。
「…そういえば、名前聞いてなかったね。私は葛城ナナっていうの」
「赤司征十郎です。今更で大変恐縮ですがよろしくお願いします、葛城さん」
いつものくせで固い挨拶をする俺に彼女は苦笑気味だった。
「ふふ。よろしくね、赤司君。けど、まだ固いわねー。カクテルじゃ物足りないんじゃない?私のウォッカオレンジ飲む?」
意地悪な顔をしながら、ナナは自分のグラスを差し出してくる。
「…じゃあいただきます」
初めてのアルコールに少々戸惑う俺はナナのグラスに口をつける。
だが初めて口にするウォッカオレンジはオレンジジュースのおかげで飲みやすく、ウィスキーのせいかカクテルより幾分か酔いは回るもそれが心地よく感じる。
「…美味しいですね」
「でしょ?色々頼んでみよっか」
そうして俺達は会話しながら様々な酒を飲み比べし、気がつくとナナの方が先に酔いがかなり回っていたのか、俺の左肩に寄りかかってきた。