第7章 星標
唐突に思いがけない質問をされた一君は少し驚いたように目を見張り、でもちゃんと正面から僕を見返して答えてくれた。
「好きか嫌いかと問われれば、間違いなく好いている。」
………僕の心が少しざわつく。
それを見越したように一君は続けた。
「但し、俺の想いは身内のようなものだ。
有希を妹のように思っているからな。」
ああ…平助じゃなくて、一君が『それ』だったんだね。
僕の人を見る目はまだまだだなって痛感するよ………。
「だから何よりも有希の幸せを願っている。」
更に一君はまた一段と真剣な眼差しで……僕に言った。
「総司……有希を頼む。」
「うん。幸せにする………約束するよ。」
僕のその言葉を聞いて、一君は安心したように立ち上がった。
「……達者でな。」
「……………一君も。」
何年も一緒に居た僕と一君の別れの挨拶は、こんな簡単な言葉だった。
でも、それで充分だったんだ。
そして、一君と平助が伊東さん達と一緒に此処を出て行った朝……………
有希ちゃんが目を覚ました。