第7章 星標
土方さんが出て行ってからも、僕はもやもやした気持ちが抑えきれずにいた。
一君が、伊東さんと……?
上手く説明出来ないけど……何かがおかしい気がして気持ちが悪い。
伊東さんにしてみれば一君はこれ以上無い戦力になるだろうから、報酬でも何でも手を尽くして引き抜きたいってのは分かるけど…
でも、一君がそんな話に乗るなんて事はまず考えられない。
一君と話すべきなんだろうけど、じゃあ何を話すんだって考えると……何を話せばいいのか分からない。
結局僕がここから動けないままでいると、一君の方から僕の所へ来てくれた。
「有希は……どうだ?」
一君は心配そうに有希ちゃんの顔を遠巻きに見ている。
「………何も変わらぬな。」
そう言って一君は僕の前に腰を下ろした。
「副長から聞いたと思うが……」
「うん。伊東さんと一緒に行くんだってね。」
「ああ。………総司には色々と世話になった。
いや、世話したのは俺の方か………?」
真面目な顔でそう呟く一君はいつも通りの一君で…
何故だか僕はほっとした。
一君が伊東さんに着いて行く理由を知りたい気もするけど、聞いた所で一君が自分で決めた事なんだから、僕がどうこう言える訳でもないし………
だから僕は前からちょっとだけ気になってた事を聞いてみる。
「一君はさ………有希ちゃんの事が好きだった?」