第7章 星標
「こっちにしても伊東さんを騙してたのは本当の事だから強く出れねえし………
で、結局は近藤さんも渋々了承したって訳だ。」
僕は伊東さんの事が大嫌いだったから、ここから居なくなってくれるのは願ったり叶ったりなんだけど………
隊士の数が減ってしまうっていうのは、近藤さんや土方さんにしてみればかなり頭が痛い問題なんだろう。
「それでだな………」
一呼吸置いた土方さんは居ずまいを正して、僕と正面から向き合う。
「………平助も伊東さんに着いて行く事になった。」
「それって………」
「言っておくが、俺と近藤さんが強制した訳じゃねえ。
平助がてめえで決めた事だ。」
「そうですか。」
「それから……平助は二度とお前と有希の前には顔を出さねえ……だとよ。
だから自分を斬りたくなったら、手間かけて申し訳ねえが
総司の方から来てくれ……
何時でも構わねえからってぬかしやがった。」
僕は何も言えずに、ただ俯くだけだった。
「なあ…総司。……これで手打ちにしてやっちゃくれねえか?」
土方さんにこんなに真っ直ぐ見据えられたのは初めてかもしれない。
僕はまた、それを決めるのは僕じゃなくて有希ちゃんだから…と狡い方法を使って決断から逃げた。
本当はもう僕の中では答えが出ているのに………。
「………そりゃそうだ。
俺達が勝手に手打ちだ何だって決めていい事じゃねえよな。」
土方さんはそう言って苦笑した。
「だけどな、総司。
有希が……こいつが…平助を許さない、殺してくれって言うと思うか?」
それを聞いて、今度は僕が苦笑しながら答える。
「言う訳無いでしょ……」
それから土方さんは「お前もちゃんと食って、それで少しは眠れ」と、いつもの説教口調で言いながら立ち上がり、部屋を出て行く時に「ああ……それから…」と振り返った。
「斎藤も伊東さんに着いて行く。
話したい事があるなら早いうちに済ませた方がいいぞ。」