第7章 星標
二人が出て行ったのと入れ代わるように、今度は山南さんが部屋に入って来た。
「沖田君、少し…宜しいですか?」
「山南さん……こんな所をうろうろしていていいんですか?」
僕がそう問うと山南さんは
「まだ、起き出した隊士もいないようですし…大丈夫でしょう。」
と、にっこり笑った。
「それで…何なんですか?山南さんも一君に何か聞いてきたんですか?」
僕は少しだけうんざりした態度を顕にした。
「いえ……詳しい状況は何も知りません。」
そう言って山南さんは僕の横で眠っている有希ちゃんを慈しむような目で見つめた。
「ただ……彼女のあんな悲痛な叫びを聞かされてはね……。
居てもたっても居られず、こうして来てしまいました。」
そして山南さんは僕の手に一包の薬包を握らせる。
「これは、気を落ち着かせて眠りを誘う薬です。
気休め程度にしかなりませんが……
もしまた彼女が錯乱してしまうような事があれば、飲ませてあげて下さい。」
それでは、と山南さんは部屋を出て行こうとする。
僕が慌てて山南さんにお礼を言うと
「沖田君……君がしっかりしなくてはいけませんよ。」
と優しく諭され、昔の山南さんが戻って来てくれたようで僕は何だか無性に嬉しかった。
ねえ……有希ちゃん。
皆が君を心配してるよ。
君は本当に皆に好かれていたんだね。
そんな君が僕を選んでくれたなんて、僕は世界中の誰よりも果報者だよ。