第7章 星標
「なあ……総司。」
新八さんに呼ばれて、僕は無言のままそっちに視線を向ける。
「……こんな事、俺達が言う筋合いじゃねえってのは百も承知だ。
けどよっ……けど…平助を……許してやっちゃくれねえか?」
「……………………………………」
「勿論、お前の気持ちも分かる。
そりゃ、平助を斬っちまいたいって思うのは当たり前だよな。
でもよ……あの平助がこんな事を仕出かすなんて、
余程追い込まれてたんだなって……上手く言えねえけど……
その…平助の気持ちもっ………」
「どうでもいいですよ。………平助の気持ちなんてね。」
僕は新八さんの言葉を遮って、二人の顔を交互に見やる。
新八さんは自分のした事でも無いのに、眉を寄せて本当に申し訳無さそうな顔を僕に向けている。
左之さんは無表情だけど、きっと新八さんと同じ気持ちなんだろう。
二人共、平助の気持ちも僕の気持ちも手に取るように分かるから、本当にどうするべきなのか悩んで葛藤しているみたいだった。
「頼むっ………総司。」
新八さんは胡座をかいた自分の膝に手を付いて、深々と頭を下げる。
僕は一つ溜め息をついてから言った。
「平助を許すも何も、それを決めるのは僕じゃなくて有希ちゃんだし……
だから僕は有希ちゃんがどうするのか決めるまでは何もしませんよ。」
その僕の言葉に新八さんは心から安堵した表情になって、
「そっか………本当にすまねえ。」
と、もう一度頭を下げた。
その後、俺達に出来る事があれば何でも言ってくれって言いながら立ち上がった二人に僕が「平助は……?」と問い掛けると、左之さんは振り返って
「今は斎藤が一緒に居る。
ま、とにかくお前や有希を煩わせるような事はこれ以上絶対にさせねえから
………お前は有希の事だけ考えてろ。」
そう言うと僕の肩に手を置いて、一段と真剣な面持ちで言った。
「何があっても……お前が有希を支えてやれよ。」
僕は「勿論ですよ」と答えて、部屋を出て行く二人を見送った。