第7章 星標
東の空が白んできて、小鳥の鳴き声が聞こえる。
雨………上がったんだ。
僕の傍らで有希ちゃんは静かな寝息を立てていた。
その可愛らしい寝顔に、こんな状況ながらほんの少しだけ頬が緩んでしまう。
本当に……君が心から愛おしい。
これからは絶対に僕が守るから……君に辛い思いなんて絶対にさせない。
悲しい涙なんてもう絶対に流させない。
そう決意を新たにし、有希ちゃんの寝顔を見つめている僕の背中に新八さんが声を掛けて来た。
「…ああ…総司………ちょっといいか?」
「………何ですか?」
僕の素っ気ない返事に、気後れしたような新八さんと左之さんが部屋に入って来る。
「俺ら、ちょっと前に帰って来たんだけどよ………」
「また、呑んでたんですか?」
僕は興味が無い素振りを隠しもせずに言った。
「…………斎藤に……聞いた。」
「………へえ……そうですか。」
気まずい空気が充満する中、左之さんがすっと有希ちゃんに近づいて
「酷えな………可哀想に………」
と、有希ちゃんの頬に残る痣をそっと撫でた。
「触らないで下さいよ……
もう僕以外の誰かが有希ちゃんに触れるなんて我慢出来そうにないから…」
僕は穏やかな口調とは反対に、激しい熱を含ませた目で左之さんを睨み付けた。
「ああ……そうだな。………すまねえ。」
そう言って左之さんは後ずさると、新八さんと並んで腰を下ろした。