第6章 十六夜涙
別に一君に聞いて欲しかった訳じゃない。
勿論、俺がやっちまった事に対する言い訳をしたかった訳でもない。
ただ……声に出さずにはいられなかったんだ。
自分の中だけに収めておくのが心底辛かった。
吐き出しちまえば、少しは楽になれる気がした。
「…………ずっと……有希の事が好きだった……」
最後にそう吐き出した時、これまで何も言わずにただ俺の独り言を聞いていた一君がそっと呟いた。
「……………そうだな。」
その穏やかな声色に俺ははっとして顔を上げると、一君は凄げえ優しい目で俺を見ていてくれた。
………その時、俺は気付いたんだ。
一君の言った監視ってのは、俺を死なせない為の……優しい監視。
俺が勝手に腹を切ったり、自害したりしないように一緒に居てくれてたんだって…。
………駄目だ………泣いちまいそうだ。
泣き笑いみたいに顔を歪めて誤魔化そうとしたけど、結局俺はぼろぼろと涙を溢しながらもう一度……今度はちゃんと一君に向かって言う。
「本当に……好きだったんだ。」
一君は少しだけ微笑んで………ゆっくりと頷いた。
こんなに涙を流したのなんて、ガキの頃以来だ。
でもどうしても止めらんなくって………
俺は畳に突っ伏して、声を上げて泣き続けた。