第6章 十六夜涙
俺は自分の部屋で膝を抱えていた。
一君に言われて部屋に戻って来たものの、悶々と頭を抱える事しか出来ない。
何て事をしちまったんだろうと、何度も後悔したところで何かが出来る訳でもなく……
延々と後悔や懺悔がぐるぐる頭の中で回り続けて、おかしくなっちまいそうだ。
いや……おかしくなっちまった方が楽なのかもな?
俺は有希が好きだった。
いつ好きになったのかは、もう覚えてない。
初めて会った時からかもしれない。
小さくて細っこい有希を見て、女だって知って……守ってやらなきゃって思った。
だからがさつな男共に囲まれておどおどしてる有希を見かける度に、声を掛けていろいろ構ってやったんだ。
いつも伏し目がちで怯えているようなお前に俺が声を掛けると、誰にも見せた事の無い笑顔を俺だけには見せてくれる。
「平助君」って俺の名前を呼びながら、仔犬のように俺の後ろを着いて来る有希が可愛くて堪らなかった。
本当は有希を俺だけのものにしたかったけど、新選組の組長なんてやってる俺はいつ死んじまうか分かんねえし、側に居てお前を守り続けられるならそれでいいやって…………………
なのに……有希は総司のものになった。
総司の口からそれを告げられた時、俺の心臓は凍り付いた。
どうして……どうして俺じゃないんだって……。
それでも、有希が総司を選んだなら祝福しなきゃって覚悟を決めた。
総司に構われて幸せそうな有希の顔を見た時、これで良かったんだって思えたし……。
だけど有希の顔をまともに見れなくて、挙げ句変な態度をとっちまって……
俺って小せえ奴だよな…。