第5章 散らない花
僕の寝間着を有希ちゃんに着せて、布団を掛けてあげてから、傍らに腰を下ろした。
有希ちゃんの額に絶え間なく汗が滲むから、何度もそれを乾いた手拭いで拭き取る。
「…………………んん…」
微かな吐息を漏らして、ゆっくりと有希ちゃんの目が開いた。
「有希ちゃん。」
僕が心底ほっとして呼び掛けると、有希ちゃんは僕の目を見つめて本当に嬉しそうににっこりと笑う。
その笑顔に僕はほんの少し違和感を感じたけれど、上体を起こそうとする有希ちゃんの背中に手を伸ばした。
「ここ……沖田さんのお部屋…ですよね?
寝間着も………………」
有希ちゃんが不思議そうに首を傾げ、僕に触れようと伸ばした自分の手に目を止める。
「………………これ……何?」
左手で右手首を擦りながら考え込む仕草を見せる有希ちゃんに、僕が急激に不安を覚えた途端、有希ちゃんの身体が有り得ない程がくがくと大きく震え出した。
大きな目を更に大きく見開き、呼吸がどんどん激しくなる。
「駄目だよ……有希ちゃん。僕を見て。……ねえ、僕を見てよっ。」
そう言って有希ちゃんの顔を覗き込もうとした瞬間、有希ちゃんの背中が大きく仰け反り………
「あ…うああああああああああああああっっ」
断末魔のような悲鳴を上げた。