第4章 闇の彼方まで
その時、ぱしんっと大きな音が響いて障子戸が開け放たれ、そこから聞こえる抑えきれない怒気を孕んだ言葉に私と平助君は凍りつく。
「…何してるの?」
………沖田さんの声。
「………あ…総司………俺…」
平助君はがちがちと震えながら、ぎこちない動作で沖田さんを見上げた。
私の無惨な姿を見咎めた沖田さんの殺気がびりびりと突き刺さる。
「……………平助っ」
沖田さんの右手が腰に掛かって柄尻を掴むと、鯉口がかちりと音を立てた。
「総司っ………俺を斬ってくれ!!」
沖田さんの足元に土下座し、額を畳に擦り付けながら平助君は叫んだ。
「俺っ…知らなくて……いやっ、そんなの言い訳にもならねえ……
けど全部俺が悪くてっ……有希は…何も……
だから俺を斬ってくれ……殺して…くれ……」
最後は涙声になる平助君を、沖田さんは氷のように冷ややかな目で見下ろしていた。
沖田さん…ごめんなさい。
あなたともう一緒にいられない私を許して下さい。
………だから、平助君じゃなく私を斬って。
沖田さんは何度も私に「殺すよ」って言っていた。
だから…今、殺して。
あなたに殺されるなら、私はとても幸せだから…。
私の目に映った沖田さんの姿が徐々に霞んでいき、そして私はようやく意識を手放した。