第4章 闇の彼方まで
私は思考を停止し、身体中を弛緩させた。
急に力が抜けきった身体に気付いた彼が、私の股間に埋めていた顔を上げ不審気に見つめたかと思うと、ずるずると這い上がり私にしがみつくように覆い被さった。
空をさ迷う私の視線に彼の顔が被さり、また激しく唇を奪う。
彼の舌が今度は難なく私の口内に入り込み、口腔全てを舐め上げ唾液を送り込んでくる。
その唾液をとろとろと口の端から垂れ流しながら、ついさっき自分の欲望を思い切り吐き出し汚した場所を、よくもこんな丁寧に舐められるものだと、私は不思議と冷静に考えていた。
「好きだ…………っん………凄げぇ好き……好き……」
浅く深く何度も口付けながら、その間に彼は苦しそうに囁き続けた。
彼の指が私の乳房から腹を経て腰へ……と段々下がっていき、臍の下辺りで一瞬躊躇した後、彼の膝を差し込まれて緩く開いていた両脚の間に辿り着く。
二度三度秘部を擦り上げたかと思うと、唐突に指先を中に突き立てた。
「んっ……」
その軽い違和感に眉をひそめた私の反応を見た彼は、少し安心したような吐息を漏らし
「………動かすから…」
と、指先のみで抽挿を繰り返す。
暫くすると其処からくちゅくちゅと微かな水音が漏れ出し始め、それに気付いた彼は、嬉しそうに顔を綻ばせて私に問い掛けた。
「…濡れてきてる………有希、気持ちいいの…か?」
この時の私には快感など全く訪れてはいなかった。
多分その潤いは、これから挿入されるであろう異物によって、膣内が傷付けられるのを防ぐ為の防衛反応だったと思う。
でも年若い男である彼にそんな事は理解出来るはずも無く、ただ純粋に自分の愛撫に満足しての反応だと考えていた。
だから抽挿を繰り返していた中指を、迷い無く一気に奥へ突き立てる。
「…………いっっ」
その衝撃に私の腰が上へ逃げようと退きかけるが、全身に覆い被さる彼の体重がそれを許してはくれなかった。
節榑立った長い指が執拗に膣内を掻き回すと、微かだった水音がぐちゃぐちゃという濃厚なものに変わって彼を益々昂らせる。
その頃には私の中に痛みとは違う、何かむず痒いような感覚が沸き上がり、膣口の腹側をなぞられた時にはついに甘い声が漏れた。
「………っは……んん…」
その瞬間、彼は弾かれたように顔を上げ、新しい玩具を見つけた子供みたいに笑いながら言った。