第3章 はらり
沖田さん達が出掛けてから暫くして、永倉さんと原田さんが玄関に現れた。
「せっかく鬼の副長も居ねえんだしよ。
ちょっくら羽目外してくるわ!」
「ま……俺達、有希に振られたもん同士で泪酒ってやつだな。」
「それを言うなよ、左之。また悲しくなってくるじゃねえか。
と、言う訳で有希ちゃん。
たぶん朝まで帰って来ねえと思うから…よろしくっ。」
「分かりました。でもあまり無茶はしないで下さいね。」
「おうよ!」
永倉さんは、にかっと笑ってから邸内に向かって
「おい、平助!何やってんだよ。行くぞ!」
と叫んだ。
「……分かってるよ。今、行く。」
玄関に現れた平助君は、私の横を素早くすり抜けて出て行った。
……やっぱり私の顔を見てくれない。
いつもだったらこんな時は必ず「じゃっ、行ってくんなっ」って笑顔を見せてくれるのに…。
……平助君、どうしたんだろう?
……少し、寂しい。
結局、一人で屯所に残された私はする事も無く、早々に寝てしまおうと寝間着に着替え布団に潜り込んだ。
少し前からばらばらと雨が瓦を打つ音が部屋の中に響いている。
眠ろうと目を閉じるけれど、気持ちが昂ってしまって眠れない。
今日は本当にいろいろな出来事があったから……。
やっぱり考えてしまうのは……どうしても沖田さんの事。
雨に濡れたりしていないかな?
今夜は風も冷たいし、もし濡れたりしていたら風邪をひいてしまう。
それに危ない目に遇っていないだろうか?
……早く会いたい。
……早く沖田さんに触れたい。