第1章 4月の風が吹く頃
会いたい、私がそう口にした瞬間いつも通りの優しいが風が私の横を流れた。
通り過ぎて行った風は見慣れたようにまた桜の木を揺らす。
桃色の花びらが目の前を流れていき、私が瞬きをした刹那
「こんにちは、お初にお目にかかります。」
貴方は現れました。
「あ、貴方は…?」
自分の中に居たもう一人の自分、とわかっていながらも外すことのできない質問だった。でも本当は幻覚なのではないかと目をこする私を見て、貴方はくすくすと笑う。
「私はもう一人の貴方です」
やむことのない風は、私と貴方の髪を揺らした。