第3章 4月の風が止む頃
「菊さん」
「はい なんでしょう」
今日の私は機嫌がいい。昨日散々泣いて日頃のストレスが晴れたから。それと、彼と出会って明日で1か月。いつ消えてしまうか分からない、だから早いうちにお祝いパーティーをしたい。そのため、今日は彼に内緒でそのための準備をするからだ。
それなのに、私とは対照的にいつも明るい顔色のはずの彼は少し悲しそうに目を細めて笑顔を作っていた。
「…ごめんなさい、やっぱりなんでもない…です」
「……?そうですか? すみません、ちょっと出かけてきます。すぐに戻ってくるので待っていてください!」
「了解です、気を付けていってらっしゃい」
浮かれた気分で家を後にする。
彼に喜んでもらいたい。彼にお礼がしたい。
ただそれだけ。