第7章 帰還
「骨折している腕の添え木がずれているので直したほうが良いですね」
そう言ってコルネリアは包帯をくるくると解き、添えていた平たい木を元の位置に戻して新しい包帯で巻き直す。
すると痛がっていた兵士の様子が少し良くなったがまだ痛がっていた。
「鎮痛剤を打ちましょう」
そう発した言葉に自分自身の心臓がチクリとした。
壁外で味わったあの経験が蘇る。
コルネリアは頭をよぎる光景を振り払いながら鎮痛剤を投与した。
その後ベッドに横になっている兵士を一人ずつ確認して、状態が良くなった兵士を部屋へと戻した。
「手伝って下さって有難うございました。
後は1人で診れるのでいつもの業務に戻って頂いて構いません」
微笑みながら3人の兵士達に言うと1番大柄の兵士が口を開いた。
「俺達なりに考えたんだが…このまま医療班に居ようと思う。
コルネリアが良いならだが…」
思いも寄らぬ言葉を聞いて驚いたが3人はエルヴィンの命令で医療班を手伝ってくれていただけなので、自分自身で決める事は出来ない。
「お気持ちは嬉しいですが、今回は団長の命令でした。
団長の許可があれば私は凄く嬉しいですが…」
「分かった。
団長の所へ行ってくる」
最後まで言う前に3人は医務室を出て行った。
通常なら元の班に戻るほうが兵力的には格段に良い筈だが、さすがに1人で医療班を担うのは辛いとコルネリア自身も壁外で分かっている。
だが他の班に迷惑がかかる事も分かっていた。
「あいつらもお前の事を認めやがったな」
「兵長!」
声が聞こえたほうを振り向くとリヴァイが開いたドアにもたれかかりこちらを見ていた。
「エルヴィンから話は聞いている。
壁外で死んだ例の兵士の家に行くんだろ?」
「はい。
しかし場所が分からないのでどうしようも無くて兵長が帰って来るのを待っていました」
「案内する」
そう言ってリヴァイが廊下に出るのを見てコルネリアは慌てて言った。
「待ってください!
まだ負傷者が居るのでここを離れる訳には…」
すると背中を向けていたリヴァイがこちらを向きズカズカと入って来るといつもコルネリアが座っている椅子にドカッと座る。
「そんなに重症の奴がいるのか?」
「勿論です。
足を骨折してしまった人も居ます」
「なら、あいつらが戻ってくるまで待つか」