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貴方を守る

第6章 壁外の現実


暫く雑談をするとリヴァイが立ち上がった。

「そろそろ戻るぞ」

「私はもう少しここに居ます」

「いくら夜だとしても巨人が現れないとは限らない。
テントに戻ったほうがいい」

そう話すリヴァイに対してコルネリアは苦笑いして答えた。

「今はまだ…戻りたくないです」

それを聞いて察知したのか、リヴァイはまた先程と同じ位置に座った。

「やっぱ辛いのか?」

「…そうですね。
覚悟はしていましたが、いざ目の当たりにすると悲しいです。
特に手の施しようが無い人に安楽死出来る様に麻薬を使うのは…
医療に携わる身として不甲斐ないです…」

そう言うとコルネリアの目に涙が溜まってきた。

ここまでの道のりで死亡した兵士の中には、訓練中に負傷して手当てをした兵士もいた。

何人も手当てしている内に仲良くなった兵士もいる。

そういう兵士の死を受け入れるのはかなり大変で目を背けたかった。

「目を背けるなと言われて、そうしようと心に誓っていました。
でも、やはり同じ兵団で仲良くなった人の死を受け入れるのは辛すぎます…」

「そうだな…
俺も何度も同じ様な事を味わってきた。
今回もそうだ」

そして等々コルネリアの目から涙が零れた。

リヴァイには気付かれない様に声は出さなかったが、涙を手で拭われて気付かれたのが分かった。

「どうして…死ななければならないのですか…
兵士として心臓を捧げると誓っても、本当にそれが本望だとは私には思えません。
何で…何で…この世には巨人がいるんですか…」

今まで泣く事を我慢していた分、どんどん涙が溢れてくる。

「入団前日にお前は内地に居たと言っていたが、一般市民が内地に行く事は滅多に無い。
お前…まさか…」

「兵長の察している通りだと思います。
私の両親は中央憲兵の兵士です。
ですから入団してからだと会えなくなるので、その日は特別に許可を頂いて両親に会っていました」

「そうか」

コルネリアの言葉にリヴァイは納得して肩を抱き締めると頭を自分の肩に乗せた。

「今夜だけは傍に居る。
俺だってお前の荷物を背負いたい。
だが、明日からはテントで過ごすぞ」

「…有難うございます」

そう答えると頭をポンポンと叩かれた。

リヴァイが居るから今こうして自分を保つ事が出来る。

今はただ傍に居れる事を嬉しく感じる事にした。
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