第6章 壁外の現実
それからは暫くリヴァイが落ち着くまで抱き締めていた。
いくら人類最強と言われても1人の人間。
特に自ら選んだ兵士を死なせてしまった事に関して、自分自身を責めている筈だ。
そしてリヴァイが抱き締めている腕の力が抜けたのを感じるとコルネリアもリヴァイを抱き締める力を抜いた。
「そろそろ戻らなくて良いのか?」
「今はまだ大丈夫です。
兵長こそ戻ったほうが良いのではないですか?」
「俺が居なくても他の奴らが対処しているだろう。
いつもの事だから気にしなくていい」
そう答える彼の声は掠れていた。
きっとリヴァイと長年関わっている幹部達はこうなる事を知っているのだろう。
「今日、初めて巨人を見て思った事があります」
コルネリアは深呼吸しながら呟いた。
「巨人は確かに私達人間を標的にして食べますが、何故人間だけ捕食対象にするのか」
そう言うとリヴァイがこちらを見てきたのを横目で確認して言葉を続けた。
「巨人は人間だけを狙っています。
例え馬が1匹居ても捕食しません。
入団前日に巨人が現れた時、私は内地に用事があって遭遇しませんでしたが…
目の前に犬が居ても興味を示さなかったと聞きました。
何か私達の知らない事があるのでは無いかと…」
「それならハンジも同じ事を言っていた。
あいつも兵士になった頃はただ巨人を殺す事しか考えていなかったらしい。
だがある日、倒した巨人の頭を蹴った時にでかい割には軽かったそうだ」
「それから巨人の研究を始めたんですね」
「ああ…
正直こっちとしてはその話をされるのは迷惑だがな」
リヴァイの言葉に思わず笑ってしまったが確かにそうだった。
ハンジは巨人の研究の話になると時間を忘れて語り出す癖がある。
それを知らなかったエレンは被害にあっていた。
「そういえばエレンは大丈夫ですか?」
「あいつなら今頃爆睡しているだろ」
「そうですね。
星の位置から見て夜中の1時ぐらいですから」
コルネリアがそう言うとリヴァイは驚いた。
「お前…星の位置で時間が分かるのか?」
「大体です。
時計が無かった時は星を見て時間を計っていたと聞いた事があって、それで少し勉強していました」
「前から思っていたが…勉強が好きなのか?」
「好きというより趣味…ですね。
それ以外は取り柄はありません」
「…ハンジに似てるな」
