第6章 壁外の現実
ブレードを首元に当てられたがコルネリアは動かなかった。
リヴァイが泣いている…
きっと班員の誰かが亡くなったのだろう。
そして死亡者リストを思い出した。
「…リヴァイ班も壊滅状態なんですね」
そう言うとまた俯いてブレードを持っている手を下した。
「俺が全て悪い。
俺があの時…班を離れていなければ…」
「…巨人を捕獲する為に班を離れたのですね」
目の前で俯いている彼は何も答えなかった。
リヴァイ班は、リヴァイが自ら指名して選ばれた兵士だけが所属する精鋭の集まりだ。
それが壊滅したとなるとトップであるリヴァイに責任が重くのしかかっているのだろう。
「兵長…」
返事をしない相手に向かってコルネリアは言葉を続けた。
「壁外ではお互いの事は忘れると約束しましたが、私には出来そうにありません…
兵長にとって私の存在は何ですか?」
するとリヴァイは少し顔を上げ、小さく呟いた。
「壁外では上官と新兵だが…お前は俺の恋人だ」
それを聞いてコルネリアはリヴァイに近付き、そして抱き締めた。
「兵士長である以上、皆の前で泣く事は出来ないでしょう。
でも今ここに居るのは私1人です。
兵長だって人間です。
泣きたい時は泣いて下さい。
私は兵長の気持ちを出来る限り受け止めます」
「コルネリア…」
名前を言われたかと思うと、リヴァイの腕が背中に周り抱き締め返した。
そして静かに涙を流したのを感じ、コルネリア自身も泣いた。
初めての壁外で覚悟はしていたが、こんなに辛い物だとは思わなかった。
特にリヴァイは感情を表に出さない。
そんな彼が今自分の胸の中で泣いていると思うと自然と涙が零れた。
班長や分隊長クラスなら部下の前でも泣くだろう。
だが兵士長や団長クラスになると易々と部下の前では泣く事は出来ない。
どんなに批判されても受け止めるしかない。
立場が上になればなる程、責任は重くなる。
「兵長、私は貴方の背負っている荷物を受け止めます。
それで楽になるのであれば私は何だってします。
私の戦闘能力は、生憎人並み程度ですが…
でも、医療班として兵長の心を少しでも軽くします。
ですから、もう1人で全てを背負うのは止めて下さい…」
また怒るかもしれないと思いながら言うと予想外の返事が帰ってきた。
「コルネリア、すまない…」