第6章 壁外の現実
補給地点に着いた時はもう既に夜になっており、巨人が現れる心配は減ったが油断はならない。
簡易なテントを張ると、次々と運ばれてくる負傷者の手当てを行った。
巨人に掴まれたのか骨折をした者、手や足を食われた者、瀕死状態で手の施しようが無い者。
様々な負傷者を見る度に悲しくなってきた。
手伝いの兵士もコルネリアの指示に従い処置を行う。
大体の負傷者の手当てが終わり、亡くなった兵士の名前のリストを書いていく。
全て書き終わり、同期に死者が出なかった事に安堵した。
テントを出ると空気が冷たく、ひんやりしていて気持ちが良かった。
そしてリストを渡す為にエルヴィンがいるテントへと向かい、声をかけると返事があったので入る。
「お忙しところ申し訳ありません。
これが死亡した兵士のリストです」
そう言ってリストを渡すとエルヴィンは受け取りリストを眺める。
「初めての壁外で辛い思いをさせてしまい申し訳ない」
「いえ…巨人と交戦するので仕方ありません。
それでは失礼します」
コルネリアはそのままテントを出るとふとリヴァイの姿が頭を横切った。
見渡す限りではここには居ない様だ。
少しテントから離れ、ウロウロしながら探していると1本立っている木の所に人が座っているのが見えた。
更に近づきよく見るとその人影はリヴァイだった。
コルネリアは近付いて横に座ろうとするといきなり低い声で言われた。
「俺に近付くな」
それは今まで聞いた事の無い声で少し戸惑う。
「兵長、どうかされたんですか?」
「お前には関係ない」
「関係無くはありません。
何かあったんです…」
「うるせぇ!」
話しかけている途中で突然怒鳴られ、驚いて思わず1歩下がる。
リヴァイは俯いたままだが明らかに様子がおかしい。
よく見てみると彼が座っている所の草が濡れていた。
それを見たコルネリアは怒鳴られるのを覚悟して近付き、そして抱き締めようとすると、腕をおもいっきりはねのけれらた。
「お前にはこんな姿を見せたくねぇ。
テントに戻れ」
「でも…」
「俺の目の前から消えろ!」
するとリヴァイはブレードを1本抜き、コルネリアの首元に当てた。
「俺の命令に従わねぇなら今すぐお前を殺す」
そう言う彼の目には涙が溜まっていた。