第6章 壁外の現実
そのまま最初の補給地点へと向かっていると斜め後ろを走っていた兵士が叫んだ。
「右から巨人が現れた!」
その言葉を聞いて思わず驚愕する。
安全な位置にいる医療班の所に巨人が現れたという事は、右に配置されていた索敵班は壊滅という事になる。
「俺が行く」
そう言って兵士が1人巨人の方へと向かおうとした瞬間コルネリアは叫んだ。
「交戦しないで!
そのまま振り切る」
「このままだと追いつかる!」
「そんな事は分かってる!
私達は医療班だという事を忘れたの!?」
すると兵士は黙ってそのまま巨人の方へは行かずについてきた。
それを確認してコルネリアは赤の炎弾を打つ。
暫く巨人に追いかけられながら走っていると医療班の後ろに陣形を取っていた兵士の1人が近づいてきた。
そして巨人を倒すとこちらに近付き状況を説明してきた。
「右の索敵班は壊滅だ。
もし右から巨人が現れたら俺達でどうにかする。
医療班はそのまま走れ」
「分かりました」
コルネリアが了承したのを確認すると兵士は後ろへ下がって行った。
「私達は医療班です。
巨人との交戦は最悪の事態にならない限り避けます。
もし現れたとしても絶対に行かないでください」
「「了解」」
全員が意見を受け入れたのを確認するとそのまま馬を走らせる。
自分達は医療班だ。
巨人と交戦して命を落とすような事をしてはならない。
そう思いながら走っていると1人の兵士が負傷者を運んできた。
「まだ息はあります」
「分かりました。
荷車に乗せて下さい。
貴方、私の代わりに馬を走らせて」
「分かった」
コルネリアが馬から荷車の飛び移ると同時に兵士が荷車を繋いでいる馬に飛び乗る。
傷口を見ると絶句した。
右前腕が無い…
そして傷口からは大量に出血していた為、持ってきていた布で傷口から少し離れた所を強く結ぶ。
結んでいる最中、負傷した兵士が叫び声を出すが気にしている暇は無い。
とりあえず痛みを感じさせない為に麻酔を打ち、少ししてから消毒をして包帯で腕を覆う。
患部からはまだ出血していたが連れてきた時よりかは収まってきていた。
そうする内に馬が立ち止まり、最初の補給地点に到着した。
安堵していると次々と負傷者が運び込まれてきた。
「これからが本番か」
コルネリアはそう呟いた。