第6章 壁外の現実
団長に呼び出された後、調査当日までは何事も起らなかった。
当日、荷車に荷物を運び入れていると2日前に医務室に突然現れた3人がコルネリアの前に現れた。
「あの時は申し訳ありませんでした」
胸ぐらを掴んできた体格の良い兵士がそう言うと3人揃って頭を下げる。
「気にしなくて構いません。
新兵の私の命令に従うのはプライドが傷つくでしょうし、しょうがないと私は思っていますから」
微笑みながら言うと兵士達は頭を上げてコルネリアを見た。
「壁外では皆平等だと団長に言われました。
新兵であろうと班長になった時点で俺達は部下です。
なので俺達は貴方の指示に従います。」
「有難うございます」
いきなりの態度の変化に少し驚いたがコルネリアは全てを受け入れた。
エルヴィンの執務室に呼ばれた時、質問されたのはあの時の事だけだった。
もう1つあった筈だろうが「戻って構わない」と言われ、部屋を出たが何かモヤモヤが残っていた。
しかし今はそんな事を考えている暇は無い。
急いで荷物を運び終えると、馬を1匹小屋から出して荷車を繋げると門のほうへと向かう。
今回手伝ってくれる兵士も荷車の横を併走した。
コルネリアはあえて兵士3人の名前を聞かなかった。
一応名前が書かれたリストは渡されていたが必要ない。
門に着くとリヴァイがコルネリアの姿を確認してエルヴィンに伝える。
「全員揃ったね」
エルヴィンが言うと全員が頷く。
すると門が少しずつ開いていった。
「開門30秒前!」
その叫び声と同時に兵士達の緊張感がピリピリと伝わってきた。
自分のいる位置からはリヴァイの姿どころかエレンの姿も見えなかったが、気にしないように努める。
リヴァイとの約束は絶対に守る。
「第51回壁外調査開始!
総員進め!」
エルヴィンの号令を共に全員が全速力で馬を走らせる。
初めて見る壁外は青々と草原が広がっていて、とても新鮮な気持ちになった。
暫く走ると兵士達は予め計画されていた陣形へと移る。
医療班はなるべく安全な位置に居なければならない為、そのまま真っ直ぐ走った。
すると右から赤の炎弾が見えた。
巨人が現れたサインに気付き、遥か前方を走るエルヴィンが緑の炎弾を左向きに放った。
その合図と共にコルネリア達も左へと馬を走らせた。