第5章 壁外前
「てめぇ…!」
殴られて起きられないでいる兵士の後ろにいた2人が突然殴りかかってきたが、医療に詳しいコルネリアは当然人間の体の急所を知っている。
そこを確実に殴ると2人とも、最初に胸ぐらを掴んできた兵士の横に倒れ込んだ。
「これで分かりましたか?
貴方達は医療に関して完全に素人です。
体が大きいだけでは私を倒せませんよ」
笑顔を見せながら言うと兵士達は医務室を慌てて出て行った。
それを見て思わず床に座り込む。
「やるじゃねぇか」
突然ドアから聞こえてきた声に驚いて顔を上げるとリヴァイが立っていた。
「兵長、見ていたのですか?」
「たまたま用事があったから覗いていた」
「覗くぐらいなら助けてください…」
少しよろめきながら立ち上がり、そしてベッドに座った。
「まぁ今回お前の手伝いをするのはあいつらだ。
多少は頭を冷やさせねぇとな」
鋭い目線で廊下のほうを見る彼を見て思わずため息を漏らす。
「こんなので大丈夫なんでしょうか…」
「気にするな。
もし巨人がいきなり現れたとしても、あいつらが真っ先に食われるだけだ」
「そういう問題ですか…?」
相変わらずリヴァイの言っている意味は分からないが、とりあえず壁外調査前に手伝いをしてくれる兵士の顔を見れた事だけは良かった。
「後もう1つ。
お前の立体機動は俺がメンテナンスしておいた」
「えっ」
目を見開いて驚くと今度はリヴァイがため息をつく。
「お前は医療道具の準備で忙しいだろ。
俺の準備はとっくに終わったからついでにやっておいた」
「有難うございます」
コルネリアは笑顔を見せると鼻で笑われた。
「何で笑うんですか!」
「いや、お前の笑顔がさっきとは全然違っていたからな」
「そんなに違います?」
「さっきの奴らに見せた笑顔は目が完全に笑っていなかったが、今の笑顔は普通だった」
言われてみればそうかもしれない。
先程の出来事に笑う要素は無かった為、笑顔を見せても本当の笑顔ではないだろう。
「そっちの準備は後どのぐらいかかる」
「もうすぐ終わります」
「なら、終わったらエルヴィンの所に来い。
お前を呼んでいた」
「分かりました」
そう答えるとリヴァイはこちらに近付いてきて頭をクシャクシャとして部屋を出て行った。
団長が自分を呼ぶのは何でだろう…?