第5章 壁外前
今日からは装備のメンテナンスや必要な医療器具等ありとあらゆる物を準備しなくてはならない。
医務室に着くと誰も居ない静かさに心が少し癒された。
だが後2日まで迫ってきた壁外調査の為に最低限必要な物を準備しなくてはならない。
コルネリアは戸棚を開けて備品のチェックを始めた。
全部揃っている事を確認し、改めて煮沸消毒をする。
消毒中は医務室を離れる事が出来ない為、立体機動装置のメンテナンスは明日になる。
「もうすぐかぁ…」
そう呟いてベッドに横になった。
壁外に出た事が無い為、壁外がどんな所であるか知らないし、今回の調査は巨人の捕獲を目的としているので大変になるのは予想できる。
ボーッと仰向けのままでいるとドアがノックされ飛び起きた。
すると見た事が無い兵士が3人入ってきた。
「コルネリアってのはお前か?」
3人のうち1番体が大きい兵士が話しかけてきた。
「そうですが…もしかして今回医療班に就く方ですか?」
「そうだ。
まぁ、団長命令だから渋々やるんだがな」
嫌味を込めて言う兵士に嫌な気持ちになったが、きっと後ろに立っている2人もそう思っているだろう。
「で、俺達は何をしたらいいんだ?」
「何もしなくて構いません。
準備については私が全てするので、貴方達は自分の準備をして頂けたら…」
途中まで言った所で胸ぐらを掴まれた。
「てめぇは新兵の癖に生意気なんだよ。
俺達に指図するな」
「新兵だから何か文句でもあるんですか?
医療班にまわされた時点で、今は私が貴方達の上官です」
「それがどうした。
上官だからと言ってお前なんかの指図に素直に答えると思ってるのか?」
相変わらず胸ぐらを掴まれた状態だが、足が床に届いている。
するとコルネリアは掴んでいる腕を両手で持ち、足で思いっきり兵士の体を蹴り、そのまま兵士を倒れ込ませると腹に向かって拳を振り落した。
「くそっ…!」
殴られた兵士は痛みで腹を押さえている。
「もう1度言います。
医療班にいる限り、私が貴方達の上官です。
それとも…私の命令が聞けないのであれば団長に報告しますが、その後どういう処遇を受けるのか当然分かってますよね?」
自分でも驚くぐらいの冷たく、そして低い声で兵士に言うと睨みつけられた。
「お望みであれば壁外で貴方を殺しますよ」