第5章 壁外前
「そんなに恥ずかしいか?」
背中を洗ってくれながらリヴァイが何気なく聞いてきた。
「男の人に見られた事ありませんし、それに…」
そこまで言って思わず口篭ってしまった。
「それに?」
口調からして少しイライラしている様だ。
「その…胸が…あまり…」
「そんな事か」
「そんな事ってどういう事ですか!?」
大きな声を出してしまい浴室内に響いてうるさかった。
「お前…」
リヴァイが言葉を発した事で自分の状況に気付いた。
大きな声を出したと同時に彼のほうへと体を向けてしまった事に気付き、反射的に胸を腕で隠す。
すると腕を掴まれ胸から離そうとしてきたリヴァイに対して渾身の力を籠めて抵抗したが無駄だった。
「ほう…」
胸をジッと見られ、恥ずかしさのあまり全身が熱くなる。
「これぐらいなら普通だろ」
「普通って…他の人の胸を見たことあるんですか?」
「無い」
率直に答えられて彼の感覚が分からなくなってくる。
「見た事ないのに普通って分かるんですか…?」
「内地のパーティーでドレス姿の女の胸を散々見させられたからな」
「えっ…」
思わず目を見開くとリヴァイはそれに気付き、更に言葉を付け加えた。
「ドレスの上からだ。
実際見たのはこれが初めてだ」
「ドレスを着ていても分かるんですか…?」
「大体な」
それだけ言うと今度は全身をガシガシ洗われた。
初めて裸を見られたというのに何故か抵抗する気が失せていた。
相手がリヴァイだからなのか、今の会話で彼の事を見直したのかもしれない。
男は性欲の塊だと今まで思っていた。
実際に訓練兵の時に襲われそうになった事があり、その時はミカサが助けてくれた。
そしてその時ミカサが言った言葉を今も鮮明に覚えている。
『好きでも無い奴の誘いに乗ると後悔する』
でも今、裸を見られたというのに後悔していない。
自分でも知らない内にリヴァイにどっぷりと惹かれていた。
体を委ねた状態で考え込んでいるとシャワーをかけられて我に返った。
「随分大人しくなったな」
「すみません…少し昔の事を思い出していました」
そう答えるとリヴァイは気にする事なく綺麗に泡を流してくれた。
そして一緒に浴室から出る時には裸に関しては見られても良いと思えるようになっていた。
自分の裸を見た時、どう思ったんだろう…