第5章 壁外前
「今日はここに泊まる」
「えっ?」
思わず言われた言葉に呆気に取られていると睨んできた。
「何か都合が悪い事でもあるのか?」
「いえ、ありませんが、突然だったので少し驚いてしまいました…」
自分でも分かる程ぎこちなく答えるとリヴァイは立ち上がり、部屋を出て行った。
きっと風呂に入って私服に着替えて来るのだろうと思い、自分も風呂に入る為に脱衣所に行きジャケットを脱ぐ。
すると閉めていた脱衣所のドアがガラリと音を鳴らして開いたかと思うとリヴァイが入ってきた。
「お風呂に入ってくるんじゃ無かったのですか!?」
「いつそんな事言った」
確かに言われてはいない。
だが今にも下着姿になろうとしていたので、思わずシャツで体を覆う。
「気にする事ないだろ」
「気にしますよ!
それより、兵長の私室にも浴室があるんですから、そちらで入って下さい!」
「ここに泊まると言っただろ」
リヴァイの眉間に徐々に皺が出来て刻まれてきた。
眉間に皺が寄る時は、大体考え事をしている時かイライラしている事が多いとハンジから聞いた事がある。
「わ…分かりました。
でも絶対に見ないでくださいね!」
「ガキの裸に欲情するとでも思ってるのか?」
「もうガキじゃありません…」
「俺はお前の2倍は生きている。
俺からしたらガキだ」
そう言いながら兵服を全て脱ぎ真っ裸状態になったリヴァイに気付き、思わず目を逸らす。
一瞬だが下半身を見てしまった…
後ろを向いて固まっていたが、気にする素振りを見せずに浴室に入って行く彼の後ろが横目で見えた。
その後ろ姿は見た目と反して鍛えられた筋肉で覆われていた事にまた驚いた。
人類最強と謳われているだけの事はある。
とりあえず浴室に入らなければ不信に思われる…
自分も裸になりバスタオルで体を覆って浴室に入ると、リヴァイは既に体を洗っていた。
そして問題が1つ発生した事に気付いた。
シャワーが1つしか無い…
「早く洗え」
リヴァイの横に行き渡されたシャワーを受け取り、背を向けてバスタオルを外した。
何でこういう事になるんだろう…
そう思いながら頭を洗い、そして体を洗おうとした時、突然背中に何かが押し当てられる。
「遅い」
前側を見られないように慎重に洗っていたので、その状況を見たリヴァイが背中を洗ってくれた。