第3章 地位の確立
「団長、もし今回の目的が失敗する様な事あれば…」
「心配しなくて構わない」
コルネリアの言葉を遮るようにエルヴィンは団長としての冷酷な表情を見せる。
これがエルヴィンの本当の顔…
「元々エレンをここに連れてくる為に大口叩いて一芝居打ったのだから、この責任に関しては私とリヴァイにある」
「それならば最悪…」
それ以上言葉にする事が出来なかった。
ミカサから大体の事は聞いていたが、いざエルヴィンの口から聞くと考えたくない。
「大丈夫だよ。
君が考えている状況にならないように手は考えている」
目に涙を浮かべた状態でエルヴィンを見るが何かを考えているように見えた。
そして少し重くなった空気を払うようにコルネリアは口を開く。
「どんな事があろうとも、私は私の立場を守り医療班として全力で負傷者の手当てをします」
「そうしてくれ。
君は班長だが新兵だという理由で計画を話していないが、前線は私達に任せて欲しい。
もし無事に帰還出来たら次の作戦会議からは君にも出席して貰おう」
そう言うとエルヴィンは爽やかな笑顔を見せた。
「そうだ。
ハンジから食堂での出来事を聞いたよ。
辛いだろうが耐えて欲しい。
今回の調査できっと皆の考えも変わる筈だ」
「分かりました」
敬礼をして執務室から出ると脱力感に襲われる。
この兵団の趣旨が正直分からなくなってきた。
エルヴィンが13代団長であるのならば長年壁外調査は行われてきている筈。
それなのに巨人の脅威は収まるどころか勢いを増している。
巨人を絶滅させる事は本当に可能なのか…?
色々な考えが走馬灯の様に頭に浮かんだが、自分だけでは何も出来ない。
今の心の支えはリヴァイの存在だった。
早く戻って来て欲しい…
今はまだ業務時間中の為医務室に戻らなければならない。
重い足取りで医務室へと向かうと中が騒々しい事に気付いた。
ドアを開けて入るとそこにはハンジが目をぎらつかせながら注射器を持っており、その前にはハンジの直属の部下のモブリットが悲鳴をあげていた。
「ちょっとは大人しくしてよ!」
「それだけは絶対に嫌です!」
目の前の異様な光景をただ呆然と見ているとモブリットがこちらに気付いた。
「コルネリアさん!
この人をどうにかして下さい!」
その言葉でハンジもこちらに気付いた。