第3章 地位の確立
それから壁外調査まで訓練をしつつ、それ以外の業務時間中は医務室に篭っていた。
あまり訓練で負傷する人は居ない為、少し暇に感じつつもたまに来る負傷者の手当てをする。
壁外調査まで後3日となった日、突然エルヴィンに呼び出され執務室へと向かった。
ドアをノックし返事を待ってから部屋に入る。
「わざわざ呼び出してすまない」
書類から目を離したエルヴィンは微笑みながらこちらを見つめてきた。
「呼び出した理由なんだが、今日リヴァイ達がこの兵舎に戻って来る」
その言葉を聞いて内心喜んだが表情には出さずにそのままエルヴィンを見つめた。
「どうした。
折角リヴァイに会えるのに嬉しくないのかい?」
「いえ…そういう訳ではありませんが…
その事が私と何か関係があるのでしょうか?」
冷静に答えるとエルヴィンは表情を崩さずに答える。
「リヴァイは上からの命令で仕方なく旧兵舎に行っているが、報告によるとかなり大変らしい」
訳が分からずに理解しようと努めたがやはり分からない。
「つまりだ。
君が居ないという事でかなり荒れている」
「私が…原因ですか?」
そう言うとエルヴィンは少し困った様な表情をして説明した。
「少々リヴァイの扱いは難しくてね。
気に食わない事があれば直ぐに怒るから、それさえ無ければ良い駒なんだが…」
「駒…ですか…」
仲間を駒と言うエルヴィンに少し怪訝になる。
「君は団長では無いし、作戦立案も全て私の権限だ。
駒扱いするのは嫌かもしれないが、事実壁外ではそうなる。
だが、私は私自身を守る為にここに居る兵士を見捨てる場合もある。
勿論リヴァイに関してもそうだ」
そう説明されたら更に聞きたく無くなる。
仲間なのに…自身を守る為に兵士を見捨てる…
何も答えずに俯くとエルヴィンは質問を投げつけてきた。
「コルネリア、今回の壁外調査は普通の調査とは少し違う。
エレンの能力を試す」
「…能力」
そう呟いてエルヴィンの顔を見ると冷酷さを感じた。
「もし今回、エレンの能力によって何も収穫を得られる事が無ければ私とリヴァイの身が危ない。
全ては彼にかかっている」
「!!」
もし収穫が無ければ目の前の人物とリヴァイの進退が問われる。
という事は…
「兵団自体が危うい…」
思わず出た言葉にエルヴィンは微笑んだ。
「理解が早いね」
