第3章 地位の確立
「…何されてるんですか?」
呆然としつつも2人に近付きながら聞くとハンジはにこやかに話した。
「今日新しい薬を開発出来たんだけど、注射じゃないと意味ないからちょっと試そうと思ってね」
「な…何の薬ですか…?」
「痛みが感じなくなる薬だよ」
そう言うとまたしてもモブリットのほうを向く。
「そんな心配しなくていいからさ!
副作用とか知らないと実用化出来ないでしょ?」
「じゃあ何で注射でしか出来ない物を作るんですか!」
2人の様子を見ていると思わず笑いが込み上げてくる。
「ハンジさん、とりあえず止めませんか?
せめて注射では無く飲み薬のほうが良いと思います」
笑いを抑えながら話すとハンジはモブリットの腕に刺そうとしていた注射器をテーブルに置いた。
「注射のほうが即効性はあるんだけどな~」
「分隊長…コルネリアさんの言う通りせめて飲み薬にして下さい…」
「確かにハンジさんの言っている事は正しいですよ」
微笑みながら言うとモブリットが顔をひきつらせながらこちらを見てくる。
「ですが、副作用を知らずに使うと死ぬ可能性も高くなります。
実用化したいのであれば、せめて壁外で手の施しようが無い兵士が良いかと」
「なるほど!」
ハンジは顔をパッと明るくさせる。
「飲み薬に出来ないか試してくる!」
そう言いながらバタバタと医務室から出て行くとモブリットは腰を抜かしたようで床に座り込んでいた。
「大丈夫ですか?」
「今の所は…でもまた実験台にされそうだ…」
「…多分そうなりますね」
苦笑いしながらモブリットをどうにか立たせるとフラフラとドアへ歩いて行く。
「もし何かあったら助けて下さい…」
「一応、全力は尽くします…」
そしてモブリットは医務室から出て行った。
誰も居なくなった医務室で先程ハンジがテーブルに置いた注射器を見ると悪寒が走る。
注射器に入っている通称痛み止めもどき物は紫色で、見た目からして怪しさがプンプンした。
これは誰でも嫌がる…
そう思いながら注射器の中身を捨てて煮沸消毒する為に湯を沸かす。
本来なら滅菌したい所だがその様な高価な設備は無い為、1番手軽な湯での消毒を行う。
そういえばハンジさんは妙な薬を作るので有名だったっけ…
机に座りながら次のハンジの実験の阻止方法を考えたが、何も思いつかなかった。