第3章 地位の確立
「ハンジさん!」
ハンジの姿を見て思わず叫ぶと笑顔でミカサと兵士の元へ歩み寄る。
すると今まで聞いた事の無い冷めた口調で兵士に話しかけた。
「君が…というより君達と言うべきか。
コルネリアに医療班を1人で任せる事にしたのは私の判断だけど、文句あるなら私に直接言いな。
私は彼女ならどんな重症患者でも治すと見込んでる。
君達が医療班ならどんな軽傷の患者でも死ぬだろうね」
ハンジはメガネ越しに兵士達を睨む。
「ミカサ、少し離れてくれるかな?」
言われた通りミカサは兵士から離れるとハンジの目からは殺意が感じ取られる。
そしてミカサと口論していた兵士の腹を一撃殴った。
その光景に食堂に居た全員が驚く。
殴られた兵士はあまりにもの痛さで動けずに床に倒れて苦しんでいた。
「舐めてもらっちゃ困るね。
普段の訓練を見ていると君は少々自惚れているみたいだから説教と捉えて欲しい」
そう言いながらハンジは笑顔を見せた。
その笑顔は完全な物では無く、目は笑っていなかった。
「分隊長、この事がもし団長にバレたら…」
ミカサは真顔で言うとハンジはミカサに目線を移して微笑んだ。
「大丈夫。
己の実力を知るのは言葉よりも痛みが良い。
まぁこれはリヴァイ論だけどね」
その言葉を聞いてミカサの表情が曇る。
「さてと、夕食でも頂くとしようか。
今の事は後でエルヴィンに報告するよ。
それと君達にはまだ言って無かったけど、コルネリアの事を新兵だからと言って甘く見てると厄介な事になるからね」
それだけ言うとハンジはコルネリアの隣に座り何事も無かったかのようにいつもの明るいハンジに戻った。
分隊長ともなればそれなりの実力を団長から認められたクラス。
女と言えど一兵士で体格が良い男を相手にしても実力で負かす事は容易い。
その光景を今目の当たりにした事で幹部の凄さが改めて知った。
コルネリア自身、班長という立場に居る以上最も幹部に近い立場であり、そして責任を負う立場。
まだ壁外に行った事は無いが仲間を守り、そして時には仲間を見捨てなければならない。
そう考えると頭がクラクラしてきた。
「コルネリア」
ハンジは突然話しかけてきた。
「君は君のままで良い。
自分なりの力を出したので良いから」
それがどういう意味なのかはこの時は分からなかった。