第3章 地位の確立
「あの…」
言おうか言わまいか迷っているとリヴァイはコルネリアの思っている事を見透かす様に、そして兵士長としての顔で言った。
「見送りしたければ来い」
それを聞いて内心嬉しく思うと部屋を出るリヴァイの後ろをついて言った。
そして馬小屋の所に着くと突然自分のほうへと体を向けて来たので少し驚いて身構える。
「お前は俺と話すのは苦手か?」
突拍子も無い事を聞かれ、戸惑いながらも言葉を頭で纏めながら口にする。
「優しい時はそうでもありませんが兵長が普通の顔に戻った時は正直苦手ですね」
そう言うとリヴァイはコルネリアが立っている壁を片手でドンッと叩く。
「正直お前を見ていると何か落ち着かねぇ。
恋人の前でもっと堂々と出来ねぇのか」
俗に言う壁ドンをされたが、かなりの力で叩かれた為音が大きく恐怖心に襲われた。
何も言えずにいるとチッと舌打ちをされリヴァイは離れて愛馬を小屋から出す。
そしてこちらに振り向く事なくそのまま旧兵舎へと戻って行った。
その様子を見てリヴァイに不快な思いをさせていた事に初めて気付いた。
元々強制的に恋人にされ、しかも過ごす兵舎は別。
一緒の兵舎なら慣れるかもしれないが相手は上官だ。
医療班の班長と言ってもたかが新兵。
話す機会も少ないしあの鋭い目つきで見られるとつい竦んでしまう。
馬小屋で立ち竦んでいるとミカサがコルネリアに気付き、近寄ってきた。
「どうかした?」
「ミカサ…」
同期で仲の良いミカサが目の前に現れて心が救われる。
「あのチビが馬に乗って旧兵舎に戻って行ったみたいだけど、さっきの大きな音は何?」
「ちょっとね…」
ミカサの言葉に戸惑っていると今度はミカサが壁ドンをしてきた。
「これをされたの?」
的確な事をされて頷くしか無かった。
するとミカサの表情が徐々に怖くなる。
「噂で聞いたんだけど、あいつと付き合っているって本当?」
「えっ…」
驚いて顔を上げてミカサを見るとかなり冷たい表情になっていた。
ミカサは戦闘能力もさる事ながら知性も持ち合わせている。
「コルネリア、あいつのどこが良いの」
「分からない…ただ、命令されて付き合う事になったけど、自分自身いつの間にか惹かれているのかも」
そう答えたのは先程リヴァイの部屋での状況での出来事のせいだった。