第2章 1人だけ
縫合中、怪我をした兵士は痛みで悲鳴をあげていたが処置が終わり暫くすると落ち着いて横になっていた。
その様子を見て医務室の机に座り、報告書を書く。
書いている途中に同期のアルミンとミカサが医務室に入ってきた。
コルネリアの姿を見つけたアルミンは取り乱した様子で涙目になりながら話しかけてきた。
「怪我の具合はどうなの?」
「結構傷は深いけど縫合したからもう大丈夫だよ。
後は傷が塞ぐまで化膿しない様に消毒をすれば綺麗に治る筈」
「良かった…」
アルミンは全身の力が抜けて床に座り込んだ。
不思議に思っているとミカサが事情を話す。
「実はアルミンがアンカーを木に刺そうとした時に誤ってあの人に刺してしまったみたい」
その言葉で全ての状況が理解出来た。
つまりアルミンは立体機動の訓練中に周囲に居る兵士の位置を考えずにアンカーを放ち、そしてそれに気付かなかった兵士がもろに喰らったって事だ。
ミカサはアルミンの腕を抱えて立ち上がると横になっている兵士の元へと連れて行った。
その光景を机から見ていると兵士は「大丈夫」と笑顔を見せていたので問題は解決した様だった。
「アルミン、次からは気を付けてね」
2人が医務室から出る時にコルネリアが微笑みながら言うとアルミンも笑顔を見せた。
そしてまた報告書の続きを書き始める。
その間コルネリアは講義の事で頭がいっぱいになりながらもどうにか纏め終えると兵士の様子を横になっているベッドに向かった。
「大丈夫ですか?」
「もう大丈夫。
さすがに傷を縫っている間は痛かったけどね」
苦笑いしながら答える兵士を見て安心し、動けるならもう医務室を出ても構わないと告げると「ありがとう」と言って兵士は医務室を出て行った。
コルネリアは誰も居なくなった医務室を出てエルヴィンの執務室へと向かう。
部屋の前に着くとドアがいきなり開かれ目の前に現れた人物を見て驚愕した。
「リ…リヴァイ兵士長…!」
リヴァイは気にする素振りを見せずに「入れ」とだけ言って道を開けてくれた。
そして報告書をエルヴィンに渡すと直ぐに読み、優しく微笑む。
「暫くあの兵士は大変かもしれないが、君が居るから大丈夫だね。
そうだ。
そろそろ講義を始めようと思うんだが構わないかい?」
そう言われてコルネリアは「はい」と答えた。