第2章 1人だけ
「班長になったからには覚悟は出来ていますが、少し不安はあります」
そう答えるとエルヴィンは微笑む。
「君は他の新兵と比べて随分と違うね」
「それはどういう事でしょうか…?」
訳が分からずにいるとギャーギャー騒いでいるハンジをまた無視しながら答えた。
「さっき訓練を少し覗いて来たんだが、新兵達からは緊張感を感じなかった。
全員って訳では無いが、きっと訓練兵を卒業したという自覚がまだ足りないのだろう」
「エルヴィン、そう思うなら監督を変えたらどう?」
ハンジがそう言うとエルヴィンはため息をつく。
「今日の監督を決めたのは君だろう。
人選に関しての責任は君にある」
「そうかもしれないけど…」
項垂れるハンジをよそにエルヴィンは淡々と答える。
「大体君が新兵の所属班を決めたんだ。
もう既に次の壁外調査の詳細も決定している。
今更変える事は出来ない」
エルヴィンがハンジに放つ言葉は冷たい物だった。
これが団長か…
そう思っているといきなり叫び声が部屋の外から聞こえ、兵士が血相を変えてノックもせずに部屋に入ってきた。
「申し訳ありません!
ここにコルネリアという人は居ませんか!?」
完全に取り乱している兵士を見てコルネリアが「私です」と答えると兵士は大声で話す。
「訓練中に重症を負った兵士が…」
最後まで聞く事なく急いで部屋を出るコルネリアを見てエルヴィンはハンジに言った。
「彼女の責任感は他の兵士より高いよ」
一方コルネリアは訓練場へと急いで走った。
すると目の前に人だかりが見えそこへ行くと兵士が1人腕から大量に出血していた。
それを見て急いで止血する為に持っていた布切れをポケットから取り出すと腕を縛る。
「急いで医務室に連れて来てください。
処置の準備をしてきます」
そう言ってコルネリアはまた走り出して医務室へと向かった。
到着するとすぐに傷を縫合する為の準備に取り掛かる。
程なくして傷を負った兵士が運ばれてきてベッドに横にされた。
「後は1人でしますので他の方は訓練に戻ってください」
そして先程縛った布を取り傷口を見る。
兵士達が医務室から出るのを横目で確認しながら痛がる兵士をなだめながら処置を開始した。
傷の状態を見ると形や深さからアンカーが刺さった事が直ぐに分かり、消毒をして縫合した。