第2章 1人だけ
「さすが…としか言いようが無いね」
ハンジは呆気に取られていた。
「資料も完成しましたし団長に報告しなければなりませんね」
「報告しに行くなら私も一緒に行っていい?」
「私は構いませんが…何か用事があるんですか?」
きょとんとしているとハンジは「うん」と言って頷く。
そして2人でエルヴィンの執務室へと向かった。
エルヴィンの執務室はコルネリアの部屋の真下にある為階段を下りると直ぐに着いた。
ハンジがノックすると返事があり2人で入る。
すると部屋に入るや否やハンジはエルヴィンが座っている机の前まで行き、ドンッと机を叩いた。
「どういうつもり!?」
エルヴィンは表情を変えずにハンジを見る。
コルネリアはいきなりの事で後ろで突っ立っていた。
「何がだい?」
「何がじゃないでしょ!
確かに講義は早めにしたほうが良いかもしれないけど、無茶振りにも程があるよ!」
そう言ったハンジの言葉で状況が呑みこめた。
「資料は出来たって事かな?」
エルヴィンは気にする様子も無く冷静に答えながらコルネリアのほうへと視線を送る。
それを見て資料を持ってきていたので机に置くと受け取って眺める。
「これを徹夜で人数分書いたんだよ?
そんな事してたらコルネリアの体力が持たないよ…」
「私は彼女なら出来ると思っていたが」
そう答えながら資料を読んでいる。
「エルヴィン…少しは考えてよ…
まだこの子は新兵だよ?」
その言葉にエルヴィンはハンジを見て冷たく言った。
「訓練兵を卒業した時点でいくら新兵であろうと他の兵士と変わらない扱いをするのは当然だろう?」
「そうかもしれないけど、これは酷すぎるんじゃない?」
「では何故彼女だけを医療班にした。
他の新兵も医学を学んでいるし、医療班に配属させる事も出来た筈だ」
的確な事を言われてハンジは思わず黙り込む。
「コルネリア」
突然名前を呼ばれて驚き思わず敬礼をする。
「君は医療班として1人で責任を背負う事になるが覚悟は出来ているのかい?」
「覚悟…ですか?」
腕を下しながら聞くとエルヴィンは分かり易く説明した。
「君は医療班の班長だ。
他の兵士のミスに対して責任を取る事が出来るかい?」
「エルヴィン!」
ハンジは完全に取り乱していたが目の前の彼はそれを無視していた。