第2章 1人だけ
翌日、私室で講義の為に色々な資料を準備しているとドアがノックされる。
返事をするとハンジが明るい声で入ってきた。
「コルネリア、準備のほうは進んでる?」
「はい。
ただ、こんな講義するのは初めてなのでこういうので良いのか分からなくて…」
苦笑いしながら言うと机に置いてあった資料をハンジは手に取り読み始める。
その間に大きな紙に人体の構造を分かり易く絵にして書いていく。
「これは…」
ハンジは驚いた様子で資料を見つめながら呟いた。
「やはり難しいです…?」
「そんな事ないよ!
むしろ分かり易すぎて驚いた!」
そう言うハンジの目はまだ資料にくぎ付けされている。
「エルヴィンの言った通りに少しレベルを高くしてるね」
「はい。
基本的な事だけではつまらないですし、訓練兵時代に学んだ物以外にも医学書で独学で学んだ物も書いてみました」
そう言うとハンジは1つ思いついた事を聞いてきた。
「この資料は1人分だけど…どのぐらい用意出来る?」
「あ、とりあえず昨日の晩に今ここに居る兵士の人数分は用意しました」
コルネリアは机の引き出しから資料の束を取り出し、ドンッと置く。
「これ全部1日…いや半日で書いたの…?」
「そうですね。
おかげで徹夜です…」
そう答えるとハンジは目を見開いて資料の束を見つめて固まった。
「コルネリア…どんな神経してるの…」
「あの後また団長が夜に来て下さって講義を早めにして欲しいと言われたので、頑張ってみました!」
笑顔で答えると目の前の上官は自分の頭をグシャグシャとしている。
「エルヴィンの奴…これじゃあ体力持たないでしょ…」
「団長の命令ですから仕方ありませんよ。
それに資料を書いている間、凄く楽しかったです」
コルネリアが笑顔で話すのを見てハンジはため息をつく。
「今日は訓練は免除だけど明日からは普通に訓練始まるよ?」
「もうすぐ終わるので大丈夫です!」
力強く答えるコルネリアとは対照的にハンジは心配そうだった。
そう話しているうちに人体の構造を分かり易くした大きな資料も完成し、思わず『終わった!』と大声を出してしまい恥ずかしくなる。
その様子を見てハンジは先程までコルネリア書いていた資料を覗くと叫んだ。
「これ全部自分で書いたの!?」
「はい。
やっぱ変ですか…?」