第2章 1人だけ
突然現れたエルヴィンに驚き、慌てて立ち上がると本が重い音を立てながら机から落ちたが気にせずに敬礼をする。
「そんなに慌てなくても構わないよ。
それに私から君の部屋に来たんだ。
楽にして貰った方が私としては嬉しいよ」
爽やかな笑顔を見せながらエルヴィンはハンジの横に立った。
「今回の班編成についてだが、ハンジから事情は聞いているだろう?」
「はい。
今現在、医療班は私以外に居ないと伺っています」
目の前に団長が居る事に戸惑いながらも冷静に答える。
その様子にエルヴィンは納得した様で更に質問をしてきた。
「医療班の業務内容は知っているかな?」
「明確にはまだ知りませんが、訓練以外での業務時間内は医務室に居るようにと聞きました」
「そこまで知っているなら大丈夫だね。
それでだが…君に少しお願いしたい事がある」
エルヴィン自ら部屋に来てお願いをしてくるとは何だろう…
「これに関してはかなり異例にはなるんだが、君に医療班の班長をして貰いたい」
「わ…私が班長ですか!?」
大声を思わず出してしまったがコルネリア自身混乱していて何が何やら分からないでいた。
「壁外に出た時に怪我人に対する的確な処置を行う事が出来るのは君だけだ。
勿論他の兵士にも手伝って貰うが、君以外医学に関してはほぼ無知だと思ったほうがいい。
そう考えると君が班長になるのが妥当だと思っている」
それを聞いてやっと理解する事ができ、エルヴィンを改めて見ると先程まで笑顔だった表情が団長としての威厳を放つ表情に変わっていた。
「団長の指示ならば私は受け入れる他はありません」
真剣な表情をして答えるとハンジが横から入って来る。
「エルヴィン、コルネリアを班長にするのは良いけど新兵だからって舐められる可能性があるんじゃない?」
ハンジの言っている事は正しい。
上下関係が厳しい兵士として、新兵に指示されるのは誰だって不快に思うだろう。
「その時は言葉で丸め込めば良い」
「ここの兵士は血気盛んだよ?
私は到底受け入れてくれるとは思わないけど」
「ハンジ、それなら試してみるかい?」
エルヴィンは笑顔を見せたが何か企んでいる様に思えた。
「まさか…」
ハンジは悟った様子でコルネリアを見る。
「そのまさかだよ」
「新兵のこの子にあれをさせるのか…」
…どういう事?
