第2章 02.紫と甘い香り
小春side
最近、落ち着ける場所といえばもっぱら調理室で
今日も調理室に駆け込んでしまった。
運良く授業をしておらず、いつもの調理台の前で座り込んだ。
「・・・ここなら落ち着けると思ったのに」
紫原くんとの思い出が多すぎて、逆に涙が止まらなくなってしまった。
「・・・っふ・・・・・・グス」
嗚咽を漏らさないように、唇を噛み締め、
止まらない涙の理由を探す。
確かに紫原くんがいつもと違って怖かった。
けど、彼も苦しそうで、いつもの私なら様子をみて引くことができた。
それにこんなに泣くほどのことじゃない・・・
なにがこんなに・・・・・・
いつもは紫原くんと一緒に過ごす調理室が、すごく広く感じる。とても冷たい教室。
あぁ、そうだ。
彼に拒絶されたことが辛い。
しばらくすると涙が落ち着いてきて、目を冷やすためハンカチを濡らす。
はぁ・・・とため息を漏らすと、突然扉が開いた。
「・・・小春ちん」
そこにあったのは紫原くんの姿で、目が離せなかった。
ずんずんと大股で近づいてくる彼に対し、私は一歩ずつ彼と距離を取る。
しかし、壁は必ずあるもので、ついに追い詰められてしまった。
「な、なに」
「俺、小春ちんがすき」
「は・・・?」
突拍子もないことを言い出す彼に、あいた口がふさがらない。
しかし、意味がわかってくると嫌でも顔が赤くなる。
「だから、室ちんに嫉妬した」
「え、え、」
「ごめんなさい」
しゅんっと眉をさげる彼が可愛くて、思わず笑ってしまった。
「ははっ・・・どうしたの??」
「ねぇ。室ちんのこと好きなの?」
「はぁ!?」
「だって、小春ちん室ちんにクッキーあげるって・・・」
「それは、紫原くんが、室ちんさんにも食べさせたいとか言い出したから・・・」
紫原くんが動かなくなったと思ったらぽかーーんと口を開けて停止していた。
なぜ?
「紫原くん?」
「はぁ・・・ほんとに俺ばかみたいじゃ~ん」
突然ぎゅっと紫原くんに抱きしめられた。
慌てて彼の胸を叩くと、さらに力が加えられ、
私のチカラではどうにもできなくなってしまった。