第2章 02.紫と甘い香り
氷室side
敦に用があり、教室に行くとちょうど淳が女の子の頭に手をおいているところだった。
淳のやつ、俺の知らないうちに・・・
声をかけようと教室に入ると、その子が目に涙を貯めながら駆け出していった。
「えっ・・・敦!なにやってんだよ!」
「あ~室ちんおはよぉ」
淳はというと、複雑そうに彼女を目で追いかけ、俺の姿に気づくといつものように挨拶をしてきた。
「敦、あの子泣いてた」
ピクッと敦が反応したのを俺は見逃さない。
あの子は確か、赤橋小春ちゃんだったかな。
俺のクラスの奴が好きだといっていたことを思い出した。
「小春ちゃんだっけ」
「なんで知ってるの~?」
明らかに敦の表情が濁った。
「あんな泣き顔さらして、今頃どこの誰に慰められてるかわかったもんじゃないな」
「関係ないし」
「それにしても、最近どっか行ってるって思ったらあの子のとこだったんだ」
「・・・」
「敦があの子をいらないんだったら俺がもらっても文句ないよな?」
「・・・よ」
「じゃ、またあとで」
「・・・待てよ!いくら室ちんでも許さない。」
立ち去ろうとした俺の肩を掴み睨みつける敦。
きっと、なんで自分がイライラしてるのかわからなくて余計イライラしているのだろう。
「なんで?淳には関係ないんだろ?」
「・・・ッ関係・・・ある。」
「どんな?」
困惑の表情を浮かべる淳に、ため息をつく。
こいつは本当に、、、
「好きなんじゃないのか?」
「すき?」
「一緒にいたいんじゃないのか?」
「でも、俺小春ちんを見て、イラっとしたんだ」
「なぜ?」
「小春ちんが室ちんにもクッキーあげるっていうから」
俺!?
これは想定外だったな。
って、これはただの・・・
「嫉妬だな」
でっかい子供の頭に手を置いて、紫の髪をぐちゃぐちゃにする。
「なんで、俺にもクッキーをくれるって言い出したんだ?」
「知らない」
「このままあの子とさよならでいいのか?」
「やだ」
何にも執着しない敦がこうも執着するとは。
本当に今日は驚いてばっかだ。
「追いかけてこい」
ぽんっと背中を押すと、敦は戸惑いながらも確かな足踏みで彼女を探しに向かった。
・・・・・・たぶん。