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キセキに恋した。

第2章 02.紫と甘い香り


小春side


「どうしたのかな?」


足早に去っていく紫原くんの姿を目で追う。
彼はちょっと焦ったような表情を浮かべていた気がする。
なにか、気に障ったのかな・・・

悶々としているとどこからか焦げた臭いが漂い始めた。


「あっ!!」


オーブンで様子見をしていたのを忘れていたマドレーヌを慌てて取り出すと
真っ黒にこげてしまっていた。

こんなんじゃダメなのに。

どうしても気になってしまう。





翌日。


そっと紫原くんのクラスを覗き込む。
すると紫の頭はすぐに目に入る。

窓際でまいう棒を咥えていた。


「クス・・・」


他のクラスに足を踏み入れるのは緊張するけど、ここまで来たんだから!
ちゃんと紫原くんに声をかけよう。


「よしっ・・・・・・」


ゆっくりと窓際の彼に近づく。


「紫原くんっ。おはよう。」


ゆっくりと首を動かす姿はいつもの彼のようで安心したのも束の間、
彼は私を見ると驚き、顔をしかめた。


「なんでいるの~」

「昨日様子が変だったから気になって・・・
あ、室ちんさんには渡してくれた?」

「ふ~ん。さぁねぇ」

そういうと私を見下し、窓に視線を戻した。

なんか今日の紫原くん変だ。
高圧的で、怖い。


「そ、そか。あ、今日はいつも来てくれるお礼に紫原くんの好きなものをつくりたいんだけど、何が好き?」

「別にそんなんいらないしぃ」

「え・・・」

「てか、他人のクラスまで来るなんてなんなの~?
俺と君って別に友達じゃないよねぇ」


突然の彼の言葉に驚きを隠せない。


「あは・・・そうだよね・・・。
あ、でも今日は来てくれる?
友達じゃないけど、紫原くんの協力のお陰で完成しそうだからお礼がしたくて・・・」

「ねぇ」


大きな手が私の頭に乗る。
思わず顔を上げると、そこにはなんだか苦しそうな彼の顔があった。


「俺に指図しないでくれる?捻り潰すよ?」


彼の顔はすぐにめんどくさそうな顔に変わり、そして冷たく言い放った。


「早く戻ればぁ?」

「・・・ッ」


涙がこみ上げてくるけど、こんなところで泣くわけにはいかない。
慌てて駆け出した。

教室をでる途中で、誰かにぶつかったけれど
そんなこときにせずに私は走り続けた。
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