第2章 02.紫と甘い香り
小春side
「よし、今日も作るぞ!」
次の日もその次の日も私はお菓子を作り続けた。
そうすると甘い匂いに誘われて、時折紫原くんが来てくれる。
そして、たまには厳しい意見もくれるから、凄くありがたい。
中途半端なお菓子でコンクールには出られないもの。
今日は、来てくれるかな・・・?
そんな想いで毎日お菓子を作り続け、明らかに私の腕は上達していった。
紫原くんがお菓子を食べる中、紫原くんの話や私の話をたくさんした。
いまでは、放課後の調理室で過ごす時間が私にとってかけがえのない時間になっていた。
「じゃぁ、コンクール終わったら小春ちんのお菓子食べれなくなるの~?」
「あ、そういうことになるね・・・」
「それはやだな~」
調理台を挟んで向かい合い紫原くんの表情が濁った。
私も、こうやって紫原くんと過ごせなくなるのは嫌だな・・・
「あ!紫原くん。これ、持って行って!」
ラッピングされたクッキーを2袋渡す。
紫原くんがよく室ちんさんの話を聞かせてくれるから、室ちんさんにも食べてもらいたくなったのだ。
「ひとつは紫原くんの。もう一つは室ちんさんに渡して?」
「・・・・・・。」
喜んでくれると思って渡したのだが、彼の表情は芳しくなかった。
眉を寄せ、受け取った袋を見つめている。
「どうかしたの?」