第2章 02.紫と甘い香り
小春side
紫原くんが去っていったあと、私は呆然としていた。
あんなにたくさんあったのに彼はぺろりと平らげてしまった・・・
私の家はケーキ屋さんで、実はちょっとした有名店でもある。
いつもは優しい両親だけど、お菓子作りに関してはとても厳しく、お店の調理場には立たせてもらえない。
そこで私は、パティシエコンクールに出場すべく、
学校に頼み、材料は自分で用意することを条件として、調理室を借りていた。
そんな時に彼が現れたのだ。
紫原くんは背がとっても大きいから、うちの学校で知らない人はいないってくらい有名人。
だから、入ってきたときは驚いたなぁ。
けど、美味しそうに食べてくれて、すごい嬉しかった・・・
また来てくれるかな?
「よし!呆けるのはおしまい。片付けして帰ろう!」
借りした場所は、借りる前より綺麗にして返す。
そう教えられて育ったため、念入りに清掃してから調理室をでた。
今日は、暖かい。