第1章 そばにいるから【草津】
その後戻ってきた熱史くんと一緒に、喫茶店に入った。
あの気怠そうな人も来るかと思ったけれど、面倒だから帰るといってあっさりいなくなった。
熱史くんに聞いてみると、彼は由布院煙という、所謂怠慢主義者らしい。
暫く彼の話をする中、さっきの言葉がどうしても気になった私は口を開いた。
「さっき、由布院さんが錦史郎が熱史くんを目の敵にするのは俺のせいって言ってたんだけど…どういうこと?」
「…そっか、えんちゃんそんなこと言ったんだ」
"多分、俺のせいだわ"
そう言った時のあの人の表情が蘇る。
彼も私と同じように、熱史くんと錦史郎の不仲を心配しているのかもしれないと、そう思った。
「見た通り、えんちゃんって怠慢主義者だから。草津はアイツみたいなだらしない人嫌いなのはも知ってるよね?だから、そんな人とつるんでる俺のことも嫌になったんじゃないかな」
確かに錦史郎は怠惰な人間は嫌いだ。
でも、それだけで、本当にそれだけであんなに仲の良かった熱史くんと離れるとは思えなかった。
「ほ、他は?」
「…俺が知らない間に、草津のこと傷付けたのかもしれないね」
それ以上は熱史くんもわからない様子だった。
多分、本当の理由は別にある。
それを熱史くん自身が知らないんじゃ、錦史郎から聞き出すしかない。
「熱史くんは…錦史郎とまた話したいと思う?」
「っ、勿論!きんちゃんは…大事な俺の友達なんだから」
きっぱりと錦史郎を友人と言い切る熱史くん。
その姿はやっぱり昔と変わってなくて、不意に流れそうになる涙を運ばれてきたコーヒーを飲むことで堪えた。