第3章 生徒会長【草津】
校内を歩く眉南、眉女両生徒会長。
それはまさに美男美女カップルだと誰もが認めるほどに様になっていた。
「嬉しいです、会長自ら案内してくださるなんて」
「当然だ。これも仕事だからな」
私情も混じってはいるが。
そう内心で呟いた言葉はもちろん彼女には聞こえない。
男子校という場所が珍しいのだろう、興味深そうに辺りを見渡している彼女は暫く草津の後ろをついて歩いていたものの、突然走り出した。
その視線はまっすぐ何かに注がれている。
草津もそれにつられて走り出し、曲がり角で曲がると、そこには1人の男子生徒の姿。
「兄さん!」
「あれ、、何でここにいるんだ?」
「打ち合わせ。もう、朝言ったでしょ?」
会話から彼女の兄であると推測されるその人物は、草津も良く知る人物だった。
「き、貴様は…っ!!」
「草津?…お前、妹に何かしてないよな」
「するわけがないだろう!」
顔を合わせる度に自分を苛立たせる、彼の知る限り最も怠慢な人間、由布院煙。
その妹が彼女とは一体どんな運命のいたずらか。
正直信じられないというのが最初の感想だった。
「君の兄とはこいつだったのか…」
「お知り合いでしたか、兄と」
「まぁ…知り合いといえば知り合いだが」
「そう言えばまだ名乗ってませんでしたね、会長には」
打ち合わせの最初に互いの自己紹介をする時間は確かにあった。
しかし、その間別件で教師と話し合っていた草津は席を外しており、そこで相手の名を知ることが出来なかったのだ。
名を知らなくても特に話し合いで困ることはなかったので互いにすっかり失念していた。
「改めまして、由布院といいます」
「…草津錦史郎だ」
そう言いながら握手を求める彼女はやはりあんな男の妹とは思えない。
正直二人の関係性について半信半疑ではあるが、並んでみるとその容姿は確かに酷似している。
先ほど似ていると感じたのはこいつにだったのかと理解はするも、どうも納得いかない草津であった。