第3章 生徒会長【草津】
眉南高校と眉女高校が交流会をすることになった。
その決定に男子校である眉南の生徒は浮かれ、普段話す機会のない女子達を想像してはその夢に浸る。
そうした気の緩みで規律を乱す者が続出しており、生徒会長である草津は頭を抱えていた。
叶うのならばこんな行事潰してやりたいほどに。
しかしそんなこと出来るはずもなく、本人もそれを理解しているため彼は現在眉女高の生徒会と当日の打ち合わせをしていた。
「では、1日の流れはこのような形でよろしいでしょうか?」
「あぁ、問題ない」
唯一の救いといえば相手校の生徒会がしっかりしていたことだ。
特に会長を務める少女は高2であるというのに非常に頭の回る人物で、高3、更には教師すらも引っ張るカリスマ性を備えていた。
この姿をぐうたらとした自堕落な生活を送る奴らに見せてやりたいとため息をつく草津は、ふと自分に向けられている視線に気づく。
顔を上げてその視線を辿ると、眉女高の生徒会長と目が合った。
「…何か?」
「あ、いえ…噂通りの方だなと思ったので」
「噂?」
「はい、兄が眉南在籍なんです。とても真面目な生徒会長と聞きました」
そう言って微笑む彼女は美しく、思わず草津は目を奪われる。
恋愛などする気は無いと豪語する彼だったが、なぜだか彼女のことを自然と目で追っている自分がいた。
ほんの少し、胸の鼓動か高鳴る。
「実は私、草津会長に憧れていたんです。だからお会いできて嬉しくて、つい見ちゃいました」
照れる仕草は年相応のもの。
先ほどまでの真面目な様子とは打って変わったその姿に、彼の胸の鼓動はより一層音を立てる。
(まさか…この僕が一目惚れ、とはな)
流石にここまで来てこの感情が分からないほど草津も鈍くはない。
彼女への好意を自覚した彼は改めて相手を観察する。
色素の薄い茶髪に、涼やかな青い瞳。
天然パーマなのだろう、緩やかに波打つ髪は彼女の大人びた雰囲気を強めているように映る。
(……誰かに似ている…?)
ふと頭に浮かんだ誰かの姿はぼんやりとしていて、はっきりとは思い出せない。
思い出す努力をするも眉南に兄がいるのだから似た人がいるのは当然かと思い直し、その件は一旦頭から追いやる。
代わりに、ある提案をしてみることにした。
「良ければ、校内を案内しようか?これから度々利用するのだから、知っておく必要があるだろう」