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短編集【黒子のバスケ】

第19章 ずるい女でごめんなさい【青峰】



あなたに私という存在を刻み続けるために、幼い心を利用した。

幼馴染の桃色の髪の少女に負けたくなくて、何も知らない青峰に突然の別れを突きつけた。

そうしなければ、青峰の中で自分の存在は"隣の菓子くれる姉ちゃん"くらいで終わって消え失せていたはずだ。

それが嫌で、いくつも年下で、まだ恋愛なんて興味ないだろう少年の思いを踏みにじる行為をした。


「…ごめんね、大輝」
「……」
「君がどう思っていたかは知らないけど、私はそんな素敵な存在じゃないんだ。軽蔑されても構わない、そんなことをした」
「…理央奈」
「それほどまでに、好きだったの。大輝が」


私の中で、青峰大輝という近所の少年は、1人の男の人になっていた。
再開してからその気持ちは膨らむばかりで、再開直後なんて抱きしめたくなったのだ。

それほどまでに。

「大輝の誕生日に告げようって…そう思って、バイトした。その分会えなくなるのはわかってたけど、この日の為なら耐えられた」

全てはシロツメクサのあの日から始まった。

「…理央奈」
「え?…きゃっ?!」

彼女の告白から黙っていた青峰は、突然理央奈を抱きしめるとそのままベッドへと倒れこんだ。

彼女を見下ろす青峰の瞳は、イタズラを思いついた子供のようにどこか楽しそうで。

「…大、輝?」
「すっげぇ嬉しい。お前の気持ちも、誕プレも、全部」
「でも私は…」
「そこまでの経緯なんてどうでもいい。今俺が、お前を好きで、お前がそれに応えてくれた。それだけで良い」

たとえ彼女が昔の自分を利用していたとしても、それが今の自分に何の意味を持つだろう。
愛しく思うことはあっても、軽蔑することなんてありえない。

そこまで自分を想ってくれていた彼女に青峰が返せる言葉は、感謝と愛のものだけだった。

「…誕生日、おめでとう。大輝」
「あぁ」

ようやく手に入れた互いを離さぬよう、強く抱きしめ合いながら。

2人は初めての口付けを交わした。
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