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短編集【黒子のバスケ】

第22章 Merry Christmas with笠松



「お疲れー」

「おう」


部活終了と共に走り出し、着替えを手早く済ませて部室を出る。
やたら急いでいる理由を察したのだろう周りは頑張れよと背を叩いた。

後輩の1人だけは、今度会わせろとまだ騒いでいたが。



部室から校門までの道を走る。
すると、校門のそばに立っている人影を見つけた。


危ねぇな、もう暗いのに。


見た所女子生徒のようだった。
近づくにつれだんだんその姿がはっきりとしてくる。


「…っ、!!」

「笠松くん!」


それは自分の彼女だった。


缶コーヒーを手に持ち、真っ白い息を吐いて彼女は満面の笑みで俺を迎える。

なぜここにいるのか分からなくて、呆気にとられた俺を見て彼女は一言、

「会いに来ちゃった」

と肩をすくめた。



「中に来ればよかったじゃねぇか」

「笠松くんの練習の邪魔したくなくて…練習はちょっと覗いちゃったけど」

「寒くねぇか?」

「大丈夫、笠松くんが来てくれたから」


そう言って俺の手を握る理央奈。
彼女の白い手が俺のガサついた手を包み込む。


「ね、手を繋げば寒くないもの」


黄瀬や森山のようなことは俺には出来ない。
だからこいつは、俺が出来ないことを代わりにやってくれていた。

手をつないだり、遊びに誘ったり。

それを申し訳なくも思うけど、その度にほんの少し嬉しかったりもする。

アイツは気付いていないだろうが、そういうことをするとき、彼女はいつも頬が赤い。
理央奈もやっぱり照れているとわかるその瞬間が、想われていると実感できて好きだった。


「クリスマス…一緒に過ごせなくて悪い」

「ううん、今一緒にいるし良いの。それに…バスケに一生懸命な笠松くんが好きなんだもん」


耐えきれなくて道中にも関わらず彼女を抱きしめた。
我慢しているのが分かるから。
本当は寂しいのが伝わるから。


「新年は…一緒にいよう」

「!」

「クリスマスの代わりにはならないけど…お前優先にするから」

「…ありがとう、嬉しい」


実を言うと新年も諦めてたのと笑う彼女の瞳にもう落胆は見えなかった。
そのことに安堵すると共に、来年のクリスマスは1日一緒にいようと指切りをする。


「メリークリスマス、笠松くん」

「メリークリスマス、理央奈」


外は寒いけど、繋がれた手は温かかった。
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